前回の記事<階段>の続編?と云うわけで・・・階段の手摺について。
階段は家庭内の事故の最も多い場所だと思われがちですが、実はそうではなくてみんな注意して上り下りするからだろうか事故の発生率は低い場所だそうです。
でも、事故率のパーセンテージは低くても事故が起きると大きな事故になる可能性は高い場所です。
安全に上り下りするために建築基準法では『階段の手摺設置』が義務付けられていますが『手摺とは何か?』を定義してはいません。
よく見るとなんとなく付いていると云うケースはけっこう多いのが現状・・・(^^ゞ
手摺は握れないかぎり手摺じゃない、握れない手摺ならば付けないほうがいい!
既製品の丸棒の集成材手摺を手の入る距離だけ離して付けてしまえばそれで済むかも知れませんが
それではデザイン上、あまりにも軽すぎ、どうしたら握りやすい手摺が出来るかが設計者の腕の見せ所!

と云うわけで、厚さを極力抑えた中心壁の笠木と手摺を兼ねるようにデザインしてみました・・・

手のひらが触る部分は堅木(タモ材)をかまぼこ型に加工してもらって、手ざわりが良くなるように。

横から見るとこんな感じで…

手摺の厚さ、支持材との関係とか、握った感じを何度も確認しながら断面寸法を決めていきます。

指先があたるところは柔らかい杉材を使って、

手のひらからすまいへの愛着を深めて欲しいという思いから、すまい手Mさんの手のひらで手ざわりと握り心地を確認して頂きました。

前回の記事で『階段はディティールの宝庫』と書きましたが
傑作と云われている建築には例外なく珠玉のディティールが隠されています。
カーンやライトなどの先人もたしか、かなり握りやすい手摺をつけていた記憶があります。
ほかにも細部にこだわる巨匠は数多くいるようです。
手摺の名手と云われるのは『村野藤吾』、氏の決して手を抜くことのない細部へのこだわりには鬼気を感じます。
さらに、住宅設計の名人と云われている『吉村順三』、氏は手摺の基本は『握りやすさと手触り』と説いていました。
『つかめなければ意味がない』と云う言葉も吉村氏だったと記憶しています。
あんな手摺をつけたいと、いつも思ってトライしてみるんですが気がつくと、見え掛かりばかりが先行していたり・・・(^^ゞ

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