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2023.06.18 溝口 泰史
佐野のみぞぐち建築設計事務所の溝口です。
「建築の終焉。〜建築解体前見学会〜」を東京オート上三川店様で開催しました。
短い告知期間にも関わらず多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。
また、アトリエ・モビル在籍時に設計を担当されたアトリエ鯨の岡村氏にもお越しいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。
ここで少し簡単な解説。
1982年、象設計集団とアトリエ・モビルと言う2組の設計事務所が協働で手がけ、日本建築学会賞を受賞した沖縄県の「名護市庁舎」。
そのアトリエ・モビルが設計して1984年に完成したのが、この「東京オート上三川店」です。
うねる屋根、重厚な装飾が特徴のこの建築が役目を終えて今月下旬から解体されてしまうことを知り、約40年前に完成したこの建築を多くの方の記憶に留めてもらいたいとの思いで今回の見学会を企画しました。
都内から岡村氏と同門の方もお越しいただき、岡村氏の楽しい解説の元、約3時間近く堪能させていただきました。
約40年前の建築。CADもほとんどない時代にこの曲線をどうやって設計して、どうやって施工したのか?超アナログな方法だったそうです。
工期はまさかの約6ヶ月。現場溶接を徹夜でしたそうです。今ならアウトです…。
柱には大谷石などが貼られていて、3種類のパターンの繰り返し。柱脚の凹みは植木鉢を入れるためのもの。
柱頭は鷲の彫刻。
ガラスを支える方立て(H型鋼)に斜材が貫通しています。どうやって施工したのか???
内部に移動。2階壁面には猫の壁画。「101匹猫」だそうです。
猫の壁画の詳細。
2階は市民のためのスペース。パーラー(カフェ)を作ったが、当時は最先端すぎて間も無くなくなったそう。手すりのデザインが圧巻。
左の白い天井はオリジナルではステンレス鏡面仕上げでしたが、東日本大震災で一部が落下したので張り替えたとのこと。
カラフルで一番好きな部分。塗り分けは当時のまま。指示した設計者もすごいですが、実現させた塗装屋もすごい。
猫のオブジェ。
外観、内観共に圧倒されるデザインの数々。これが約40年前にできたのが驚きです。
執念に近いぐらいの情熱をかけて手がけたものは時間を超越するものなのだなと感じました。
建築が解体されることは残念ですが、こうやって人々の記憶に残ると言う意味では素晴らしいことです。
今回の見学会開催にご協力いただいた東京オート様、アトリエ鯨の岡村様には改めて御礼申し上げます。
ちょうどよい「距離感」、溶け込むような「佇まい」、気持ち良いと思える「居心地」の3つを大切にしています。