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それでも残す

2026.09.01 佐藤 大介

R8.9.1


|街の景色|

昨年から始まった、栃木市伝統的建造物群保存地区にある土蔵の保存修理。

この土蔵は、巴波川に沿ってゆるやかに湾曲する街並みの中、
嘉右衛門橋の突き当たりにあります。

橋から見た景色がとても良く、映画の撮影に使われることもある場所。
いわば、この街の景色の一部です。


そんな土蔵の正面壁が、一昨年、突然崩れました。


|調査と判断|

そこから半年ほどかけて建物を調査。
すると、見えてきたのが建物の足元でした。

長い年月の中で周辺の地盤が少しずつ上がり、
木製の土台が半分以上、地面の中に埋まっている。
これはそのままにはできません。

せっかく上の部分をきれいに修理しても、
土台が腐ってしまえば、次の100年はありません。

そこで
今回は、鉄筋コンクリートの基礎を新しくつくり、
その分だけ土台を上げることにしました。

そのために、柱脚を一本ずつカットして、新しい土台を設けます。

もちろん、外観のプロポーションは変えません。
この建物は街の景色の一部ですから、そこは当然です。

一方で、古いものだから何でも残せばいい、というわけでもない
健全な古い木材には、これまでこの建物が過ごしてきた時間があり
できるだけ残したい。

でも、100年先まで残すために必要なことなら、現代の技術も使う。
今回のRC基礎も、その一つです。


|修理方法|

工事では、瓦屋根を一度解体し、土壁を取り除いて柱と梁の骨組みにします。
建物の中には櫓を組み、小屋組を浮かせながら、
蟻害や腐朽した部分を確認し撤去し新材に置き換える。
全部解体してしまえば、工事はもっとやりやすい。


でも、一度外してしまった木材は、元に戻せなくなることも大いにあります。
だから、できるだけ壊さずにできるだけ残す。

そのために、少し手間のかかる方法を選んでいます。


古いものをそのまま残すのではなく、
何を残し、何を直し、何を新しくするのか。
その判断こそ、設計者の仕事なのだと思います。

今月から、いよいよ新しい基礎工事が始まります。
長い時間をかけて残されてきた建物を、
今度は私たちが次の世代へ渡す。

嘉右衛門橋から見える、いつもの街の景色として。
あと100年、ここに残る建物を目指します。


souemon architects